実戦的和服術における荷物運搬法の検討

ドーモ 5月29日 呉服の日ですね. 呉服の日は24時間大バーゲンが行われたり, 和服界隈に盛り上がりがあり, 実戦的和服術者にとっては嬉しいかぎりです.

さて, 実戦的和服において荷物の運搬は大きな問題です. 一般的和服状況においては軽装を旨とし, あまりノートパソコンと本数冊を日常的には運搬しないように思います. しかしながら, 実戦的和服生活においては, 様々な場面で多様な荷物を運搬することが求められています. たとえば, ホームパーティーにワインなど持っていったり, 図書館で本を借りまくったり, 山奥にハッカソンをしにノートパソコンと参考文献のスゴクアツイホンと着替えを持っていったりしたいわけです. ところが, とかく和服で荷物というと小さな袋で財布と携帯ぐらいしか入らないやんという情報が出てきがちです. そんな小さな袋には入らない, より多くの大きな荷物を実戦的に運搬するにはどうしたらいいでしょうか.

本稿では和服で無理なく荷物を運搬する方法について, 和服そのもの, ショルダーバッグ, ミニバッグ, 風呂敷, リュックを検討する.

要求

まず, 自分がどのような荷物を運搬したいのかを整理する. 状況によって持ち運びたいもの・量は異なるが大きく分けて以下のようになる.

  • いつも
  • 日常
    • A4ノートパソコンを運びたい
    • 文庫本を2〜4冊+大きな本を1冊を運びたい
  • 図書館
    • 最大本を5冊ほど運びたい
    • A4ノートパソコンと, 本を6冊と, 着替えを運びたい
    • たまには無段階調整式竹馬(GO GO STICK TAKEUMA SW-12)やペンギンマスクを運びたい

山に行くのはあまりないし, 竹馬を運ぶことはもっとないので基本的に日常に向けて検討していく.

また, 財布やタブレット, 文庫本については低レイテンシでアクセスしたい.

基本装備

  • たもと・ふところ・帯のすきま
  • メリット
    • 追加装備なしでいつでも使える
    • 低レイテンシ
    • 改札でマジックができる
  • デメリット
    • 小物しか入らない
    • 着崩れの原因となる
    • 見た目が悪化する
    • 落下の危険もある
    • どこに入れたかわからなくなりやすい (個人の感想です)

まず基本装備である和服そのものの荷物運搬性能について見ていく.

洋服と違い, 一般的に和服にはポケットが実装されていない. そのため, 和服本体の運搬性能は低いと思われがちである.

しかし, 和服には「たもと」「ふところ」「帯のすきま」と3つの荷物保持空間がある. 「たもと」は袖の下の袋状の空間で, 男性着物の場合はここに穴がないので安心安全な荷物保持空間として使用できる. 「ふところ」はお腹のところの空間で, 落語などでてぬぐいが出てくる部分である. 「帯のすきま」は帯と帯, または帯と着物の間の空間である. たもとにはそれなりの大きさのものを入れることができる. ふところには, 薄手のものを入れることができる. 帯のすきまにはスマホや扇子を挿すことができる.

また, デニム着物など一部環境では, ポケットが実装されておりスマホぐらいは入ったりする.

和服本体に実装されているため, 追加装備コストがかからず, 低レイテンシでアクセスできるというメリットがある.

また, たもとに交通IC系アイテムを入れておくと, 袖でさっと改札を一なでするだけで改札を通れてかっこいいみたいな時もある. (個人の感想です)

その一方で, 多くの物を入れてしまうと着崩れを招く, 見た目が悪化するといったデメリットがある. たとえば, たもとに重いものを入れると袖の感じが変になるし, 場合によってはうっかり袖ラリアットしてしまう. ふところにふくらみのあるものを入れると, 帯まわりの着付けが乱れるし, おなかがぽっこりしてくる. 帯のすきまにはそもそも多くの物は入らない.

また, ふところや帯には落下の危険もある. たとえば, 帯にスマホをはさんでおくと, ふとした拍子にゆるんでスマホが飛んでいく. ふところについても, 帯を直したりなどしたタイミングでスマホがすべりおちやすい.

また, あまり体に影響がかからないものが多いからか, あちこち使っていると場所を見失うこともある. たとえば, 筆者はスマホなくしたーーーーーー!!!!ておくれ〜〜と思って, いざタブレットからスマホ探索するとお腹からアラームがしてきたこともある.

いつものショルダーバッグ

  • メリット
    • いつも通りの使い勝手
    • 全てのものに低レイテンシでアクセスできる
  • デメリット
    • 和服と見た目があわない
    • 相性によっては着物にダメージ
    • 最近肩がつらい

特にこだわらずに, 洋服時と同じバッグを使用するという装備である. 親しんだ使い勝手で, 低レイテンシで(バッグに入るなら)全てのものにアクセスできる.

しかしながら, その見た目が和服と合わなくて変だと数多く指摘される. また, 鞄と着物双方の素材によっては, 着物にダメージが蓄積され, 着物はすりきれほどけとびねじりちぎれ爆発四散サヨナラ!することもある (ニンジャの感想です). 筆者の環境でも, (中古品だけど)羽織がすりきれダメになったことがある.

また, 本を複数冊運ぶにおいて片方の肩に負担のかかるショルダーバッグはそろそろつらい, てか靴底めちゃ片方に傾いてすりきれとるやんけやっべえという問題もある.

帆布バッグ

  • メリット
    • 和服と見た目があう
    • いつも通りの使い勝手
    • 全てのものに低レイテンシでアクセスできる
  • デメリット
    • 大きいやつが少ない
      • ノートパソコン入れてぎりぎり
    • 肩はやっぱりつらいよ

ショルダーバッグの見た目とダメージの問題を解決するため, 帆布バッグを導入した. 帆布バッグは, 見た感じ和風でありつつ, 丈夫で既存ショルダーバッグとほぼ同様の性能で荷物を運搬できる.

しかし, 帆布バッグは入手個所が限られ, したがってサイズなど完全にしっくりくるものは見つけづらいという難点があった. 実際, 使用中の帆布バッグは既存ショルダーバッグより若干小さく, ノートパソコンの出し入れがちょっとめんどい, 本があまり入らないという問題がある.

また, 力学的に同じ特性を持つため, 肩はやっぱりつらい.

エストポーチ類を用いたハイブリッドシステム

重い物を持つには, たとえばリュックのように両肩・背中を活用することが大切である. しかし, リュックには背負う・下ろすといった動作が必要であり, アイテムへのアクセスレイテンシが悪化する.

ここで低レイテンシでアクセスしたいものは, スマホタブレット・財布や文庫本などの小物に限られていることに注目する. ウエストポーチ類によって小物を保持し, 大きなものは別途背負い, 機動的読書やスマホを確保しつつ, 体にやさしいハイブリッドシステムを実現する.

エストポーチ類は実は, 実戦的和服と相性がよい. 和服を着るにあたって, 帯をしめるが, この幅はそれなりに広くウエストポーチ類のベルトを自然に隠すことができる.

筆者環境では, 小さいショルダーバッグのベルトを短くして腰のまわりにフィットさせる実装をとっている. この中には鍵・財布・タブレットスマホ・文庫本3冊を保持できる.

以下では, ハイブリッドシステムにおいて, ウエストポーチ類の双対をなす背負う形式の荷物運搬方法を検討する.

汎用変形古典的荷物運搬用具風呂敷

  • メリット
    • 様々なサイズに対応
    • たためばめっちゃコンパクト
  • デメリット
    • 首がしまる
    • IOレイテンシが高い
    • 背負うと暑い

風呂敷は古来使われている荷物運搬方法である. 様々なサイズがあり, 多様な梱包方法があるので, 手に持つ・身体にまきつける・背負うなど多くの保持方法をサポートしている. また, たためばコンパクトに収納できるため, スケールアップ・スケールダウンが極めて容易である.

風呂敷で多くの荷物を運搬するのに関してはいくつか先行研究がある.

これらを参考として, 現在「お使い包み」の最後の結びをゆるくして首を通したりたすきがけにして, 荷物を運搬する手段をとっている.

この方法により, 肩・背中を活用しながら多くの荷物を運搬できる. しかし, 背負い方には今後も工夫が必要である. 現在の形, 特に首を結び目に通すスタイルは手をはなすと首がしまってトイレなどで大変苦しい. より手を活用しやすい背負い方を見つけていきたい. たとえば, 四つ結びスタイルも, 背負うタイプの運搬に使えそうで, 今後の検討課題となる.

時代劇に知見を求めて

そんで, 昨日これ見たんですよ. 満島ひかり氏がえも言われぬ雰囲気を出していてサイコーだった. 最初一人だけ声の通った稟とした感じの話し方なんだけど, それが変わっていくんだよね. いや〜

それはそうとして, 古典的に大きな荷物をどうしていたのかをざっくり時代劇を参考に見てみると, 行李や風呂敷に入れて背負子を使っているなあということがわかる.

リュック

そうすると, 世の中には背負子と行李・風呂敷が合体したような形態のものリュックがあると気がつく. リュックは背負いやすく, しかも風呂敷よりもアクセスレイテンシが低い. ただし, スケールアップ・スケールダウンはできない.

ところが, 着物にリュックは合わないとか, ショルダーバッグと同様に生地が痛むといった懸念がある. 着物にリュックが合わないに関しては前述のように, 昔から行李が使われていたわけだし, 柄さえうまくやればリュックでも違和感はないと考えている. そうすると問題はうまい生地…ということで, あまり和服がいたまなさそうで和服に合いそうなリュックを発見して, どのような使い心地になるのかを今後実地検証していきたい.

これとか

しかし, 和風でリュックでそれなり大きい(A4ノートPCするっと入れ)ってむずかしい

まとめ

実戦的和服術における荷物運搬法について, 低レイテンシがほしいアイテムをウエストポーチ類に置き, 高レイテンシでもよいアイテムを背負うハイブリッドアプローチをとることを検討している. 背負う側の実装について, 現在は風呂敷を用いているが, 高いレイテンシ・保持が困難といった課題がある. 今後, 背負う側の実装について和風でやわらかい感じのリュックサックを見つけ評価していきたい.